ニューヨーク邦楽事情   石榑雅代
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その41 2007年11月28日

ジャマイカコンサート

ジャパンファンデーションNew Yorkとジャマイカ日本大使館の後援により、ジャマイカの首都キングストン
での演奏会に生徒のチャールズ君と尺八のジムさんと3人で行ってきました。

ジャマイカといえばレゲイ音楽で有名なところ。ジャマイカで琴の演奏会???
人口の91%がアフリカ系で、ほとんどアジア系民族はいないそうです。
彼らからしてみたら日本ってどこ?って感じなんじゃないですかね。
有名なUCCコーヒーが豆を作っているくらいで、他に大きな企業もなし。
国際協力団体のジャイカがあるそうですが、大使館が認識している日本人はたったの200人。冗談みたい。

うちの息子(17ヶ月)にまだまだ手が掛かるので、ツアーはなんとか最短でと無理をお願いし、金曜日から
日曜日までの2泊3日。
その週のはじめには、別のコンサートのため1泊2日でノースキャロライナにも出かけたので、もうマジで目が
まわった(目が据わってしまっていたというのが正しいのかも知れない)1週間でした。

出発の日
飛行機の時間が何度も変更になり、空港に着いたらまた出発時間が変わっていて、ジムさんに一体何時飛
行機は出るのか!と聞いたら、「まさよ落ち着いて、カリビアンタイムだから仕方がない、そのうち出る!」と
教えてくれました。
そんな馬鹿なぁ??
1時半の予定で結局出たのは2時45分。彼の意見は正しかった。本当に誰も本当の出発時間は知らなかった
から。私はこういう所では生きていけへんと思った…。

ニューヨークからは約3時間で到着。出発が遅れたこともあり、着いたらすっかり夜。
夜なのに汗が滲む。ニューヨークはとても寒かったので嬉しいけど。
仮設ビルかと思うような空港到着口。けどそのビルは仮ではないらしい事は帰りに判った。

着くなり大使館の方に一部の蚊はなんとか?っていう悪い病気をもっているので絶対に刺されないように呉々
も気をつけてください、と言われましたが、蚊に好かれるというO型の私その場で早速刺される。
「もう刺されました」と言ったら、大使館関係者の方々が一様に顔を引きつらせて「もし具合が悪くなったらすぐ
に言って下さいよ」って。ジムさんもチャールズも引く。が、その後みんなどんどん刺される。ざまーである。夜
も遅いのでそのままホテルへ。

この機会に是非その土地の食べ物をと期待していたが、やはり夜は出歩かない方が良いと言われ、ホテル内
の日本食レストランへ。オーナーは日本人。こんなに日本人が少ないのにホテルの中に日本食レストランが
あるのは凄い。

私とジムさんがなんたらという大きな魚のまる揚げを頼んだら、予想以上に大きいのが出てきて3人して大興奮。
ジムさんなんて子供のように大喜び。
あれはたしかに現地ならではの食材だったと思う。とっても美味しかった。

次の日
ホテルの中で毎年行われるインターナショナルフェスティバルで1曲演奏。
昼時ともなればまあ暑いのなんのって!
吹き出す汗、プールで泳いでる人いる横で、ジムとチャーリーはネクタイ締めて、さぞかし暑かったことでしょう。


(写真) 真夏みたい                              .
.
ジャマイカの霊柩車 アメージンググ レイスを大音響で
流しながら走っていた。 所かわればお葬式も凄 い!


広い場所でしたから勿論マイクを入れましたが、やはり操作する人が楽器に馴染みがないため、結構時間がかかった
割に音響がいまいち。マイクに関しては毎回イライラするところですね。
が、暑くて怒る元気も出ない。それでもCDを購入してくださる人もいて、それなりに日本音楽の宣伝効果はあったよう
です。

その晩がメインのコンサート
ジャマイカの政府関係者、大使館関係者、外交官とその家族、ジャマイカに在住している日本人の約300人が招待さ
れました。コンサート会場は一瞬ジャマイカとは思えない程整備された伝統的建造物キングストンハウス。

空調設備がないので着物でなくてもよいと連絡を頂いていたので私は浴衣、彼らは作務衣。

現地人をよく知る大使館の方の判断で、あまりテンポの遅い曲は今回避けて下さいと指示があったので(レゲイ音楽が
中心な地域、無理もないですよね…)春の海、沢井忠夫先生の曲を中心に合計5曲演奏し
ました。


(写真)本当によく整備された会場敷地内          .たまにはエリザベス女王もくるのかな?


尺八本曲はちときついのでは?と内心心配していたのですが、何でもやってみないとわからないもの。演奏の後多くの
人々が尺八に凄く興味を持ってジムさんは質問攻めに。おまけにジャマイカはで竹を育てていて日本へ輸出、話はこ
れで終わらない。続きが凄い、その竹が尺八になるそうですよ。嘘のような本当の話です。

彼らの感覚にない音楽であったことは確かですが、それがかえってよかったのが、新しいジャンルとして受け入れられ
たようでした。

次の日、観光
すっごく驚きましたが、ぬぁ〜〜んとジャマイカの人はコーヒーをあまり飲まないそうです。100%ピュアーなジャマイカ
コーヒーを東京で飲 むと一杯1000円くらいすると大使館の方がおっしゃっていましたが、現地の多くの人はペパーミ
ントティーがお好きらしいですよ。ジャマイカはイギリスの植民地だったので、まあわからないでもないのですが、折角
だったら本場のコーヒー飲めばいいのに、とつい余計なお節介。
現地で飲んだらただの隣くらいの値段で飲めるのかと思ったらとても高い。それも驚き。

大使館の方のお心使いで、ストロベリーヒルという大変見晴らしの良い、有名なコーヒー農園を見下ろせる観光地に
連れて行って頂きました。そちらでジャマイカコーヒーをいただきましたが、美味しいこと!
が、そこで気付いたのですが、私ってどうやらその日にはじめてジャマイカコーヒー飲んだみたい。いま
までの人生で味わった事のない味だっかたら。
じゃあ〜〜いままでどんなコーヒー飲んでいたのか自分でもよく分からないけど。


(写真) uccの農園が見渡せる丘で本場の        .
 ジャマイカ コーヒーをいただく 
丘頂上にあるプール、こんな最高の眺めで
泳いでみたいですよね。


車で山に上がって行く途中、数人の4〜5才の子供達が靴も履かずによたよたと歩いていましたので、一体何をしている
のかと聞いたら彼らの家には水道がないので、山の清水を汲みに20分くらいかけて水汲みをするのが彼らの仕事だと。
あんな小さい子が、重い水を持って日に何度も往復するなんて、なんだか可哀想で、
つい自分の息子とだぶって考えてしまう。
当然無理な事だけど、彼らの家に水道を引いてあげられたらと強く思った。

ジャマイカのお金をアメリカドルに換金しようと空港で窓口に行ったところ、今日のドルは残り30ドルしかないと。手元に
もっと持っていたので、もうここに来ることはないだろうから換金しないと困ると
いったら、だったらユーロはいかがですか?とか。だからユーロもいらないんだってば!!

仕方がなく日本円だったら交換してもいいと言ったら、引き出しから1万円札をたった1枚だけ出してきて「これって円?」
と聞かれた。「それでいい!!」と言ったら、このお札しかないと。
ジャマイカドルは日本円で6500円分くらいしかなかったので、もうどうにもならない。

空港の換金所で大喧嘩になりそうになった時、遠くから見ていたらチャールズが助っ人に来てくれて、残りのジャマイカ
ドルに手持ちのUSドルを足して日本円の1万円にしたらどうかと提案。素晴らしいアイディアに換金所のねえちゃんと感
心した。3人いれば文殊の知恵とはよく言ったものである。

帰りも同じくそこそこの時間に飛行機は出発し、10時に着くはずがニューヨークに11時半に空港到着。とにかく帰って来
られたからいいわ。文句言いっこなしね。
次の日、朝起きてから息子が私から離れようとしない。また手を離すとお母さんがいなくなると思っているみたいで。一人
なら1分で出来ることが一緒だと10分かかる、非常にまずい日常生活を送っております(笑)


やっぱり難しい英語

いま3人の子供達がお琴の御稽古に来ていますが、みんなアメリカ生まれ。
勿論日本語と英語を話し、子供達同士はいつも英語で話しているので英語の方がきっと楽なのかな〜と思って、御稽古
の時に簡単な単語などは英語で言っていたら、一番年上のおにいちゃんが優しい声で「あのね先生、日本語で言ってく
れない?」ですって….。子供に言われるとどうしてかみょ〜に恥ずかしい。
「あたしの英語ってそんなに変?」って聞いたらにっこり笑っていた。なんと優しい子でしょうね。
私もアメリカに来て16年目、流石にたまには単語が英語になったりもするのですが、それを子供達がすかさずキャッチし
て繰り返して言うんですよぁ。聞いてないふりして、ちゃんと聞いている。あぁなんか恥ずかしい。がんばってもっと英語勉
強しよっかなぁ…(そう思って16年)



今後の予定
来年2月にマンハッタンで、久しぶりに小さなリサイタルを予定しています。
子供を抱くことで両手首を痛め、過去にすでにステロイドの注射を2回。もうこれ以上ステロイドは打てないと医者に言わ
れどうすることも出来ず。
このところ痛みが増し、右手手首は常に"だるやめ"状態。どんどん悪くなっていて字を書くのがつらい。
左手の親指辺りもやられていて、かけおしが痛くて出来ない。
いまは追われる生活で、精神的にも非常につらい時ではありますが、早くから決めていた会なのでやるしかないですね。
まあ人生こんな時もあろう、できる範囲で頑張ります。
今年のさくら祭りで演奏し大好評だった沢井比可流作曲の"夢の輪"を最後に12名程で演奏します。



その42 2008年4月22日

リサイタル
久しぶりに小さなリサイタルをしました。昨年から悪くなる一方の
右手首の腱鞘炎と中指のバネ指を患いながら。

あ〜〜〜終わった、終わっちゃった….。
小さな場所だったけど、5年ぶりのリサイタル。



夫婦2人だけの時のように思うように時間が使えず、なんども気が
狂いそうになって、意味なく涙がこぼれた日々。

地球温暖化と騒がれ、昔ほどニューヨークにも雪が降らなくなった
筈なのに、演奏会の日は雪。前日まで青空が広がってなんとも清々
しい空だったのに、朝起きたら一面銀世界。予報は当たったか…
あ〜しょんぼり。
神も仏もいないに違いないと怒りがこみ上げる。けど神様だって仏
様だって、毎日の天気までいちいちコントロールしきれないだろう
よ。考えてみれば、雪が降って喜ぶ人もいるんだから。

雪は明け方から降り始めていて、結局予報が外れてお昼過ぎにはや
んでいました。
実はマンハッタンではそんなに積もらなかったけど、久しぶりに降
ると正直いって大変。こんな日は郊外の人達、きっと家から出られ
ないでしょうね。
ってことは来られないお客さんが沢山いるってこと。げ!更に落ち
込む。なんで今日が雪なの、昨日の青空はどこ?

朝からもうどうしようもないことばかりぐずぐず考えて、頭が破裂
しそう。どんどん時間は迫る。息子預ける準備をしながら、雪が気
になって外ばかり見ていた。

主人は舞台の手伝いのため、仕事場から直接会場に来てくれるので、
息子はベビーシッターさんの所へ行ったあと夕方友人に迎えに行っ
てもらい、夜は近所の同じ年の子がいるお母さんに11時まで預け
る。息子も大変である。母ちゃんの都合で、たらいまわしである。
尺八で出演を御願いしているジムさんに「玲は今日どうした?」と
聞かれ、「こうで、こうで…」と答えたら一言「Poor…」

ふさふさと積もった道、ベビーカーを押すのは容易じゃない。が、
こんな事くらいで負けてたまるかと、歯を食いしばって力一杯歩く。
こんな大雪の日に1才児を連れまわすのは本当に不憫である。
心の中で「お母さん一生懸命頑張るよ!絶対負けない」と繰り返し
ながら、ついでに自分を励ます。

大人は(私が?)本当に自分勝手、練習の後、つい17弦用の爪を低
い机の上置いてしまった。気がついたときにはその爪がなくなって
いた。自分のミスだけど、まずはぶちぎれ。勿論犯人は息子である。
最近何でもかんでもゴミ箱に捨てるので、とっくに捨てられたと諦
めていた。が、2日後おもちゃの消防車に乗せて走り回っていたの
を主人が見つけた。彼の手の届くところに置いた私が悪いのだ。が、
その時はどうにも腹が立って、切れまくっている私におびえていた
息子に、心の中で深く謝る。そして一体私はなんてひどい母親なん
だろうとまた落ち込む。だったら怒らなければいいといつも思うけ
ど、それは非常に難しい。

今回は右手の不調で、今回とても新しい曲に挑戦する余裕がなかっ
た為、以前に弾いたことがあるものでプログラムを組みました。

琴は全く動かないので、何か動くものがあった方がいいという主
人と私の安易?な考えで、黒髪を三弦と地唄舞で。
ニューヨークでは歌舞伎などは随分多くの人に知られていますが、
地唄舞というのは、まだそれほど知られていません。
ご存知の通り地唄舞はとってもゆったりした動きですが、この毎日
気ぜわしいマンハッタンでの生活の中、燭台を両脇に置き、まった
りと流れる時間を肌で感じられたのは良かったように思います。
続いてみだれ、上弦の曲、休憩を挟んでokoto(尺八付き)、讃歌、
夢の輪の6曲。



途中で何度も指を伸ばしたり曲げたりして、バネ指がひどくならな
いように祈りながら。

いまから約20年前(うっそ〜〜〜あれからもう20年経ったの??)
まだウエスリアン大学で教えていた頃、一時帰国した時に生まれて
初めてCDの録音させていただいたのが忠夫先生の讃歌でした。
こちらの大学の学生を日本に連れて行き、忠夫、一恵両先生をお迎
えして岐阜と東京で演奏会をした年でした。
私にしては非常に珍しく、根気よくあの難しい大曲を練習したもの
です。
その頃からこんなに大変な曲はもう絶対に弾きたくないと思ってい
ましたが、今回ソロの曲をどうしようかと考えているときに、ぽろ
っと主人がもう一度讃歌弾いたら?と言ったのです。
ここ数年、かなりおさぼりの私ですから絶対に弾けない、おまけに
中指だって曲げたら戻ってこないんだから。
でも、じゃ何の曲だったら満足して弾けるか、情けないけどどの曲
もさっぱり。
迷っていても時間は過ぎていくばかり。腹をくくって讃歌に決める。



ここの生徒達も忠夫先生の讃歌のCDを聞いて、いつか弾いてみた
いと口々に言っているし、めっちゃ!プレッシャー。
一からどころか、もう一度0からの練習。
子供との時間も大切にしたいし、でも練習もしないといけない、お
まけにリサイタルの次の日にある他の公演の曲も練習しないと…。
なぜ1日は24時間しかないんだろうとまじめに考えた。

うちの主人は本当にいつも協力的で、目が据わっている私を見かね
て、何度か週末に息子と出かけてくれ、練習していていいと言って
くれた。彼もアメリカの建築家の試験を受ける為の勉強があるのに
も関わらず。絶対にこのリサイタルは成功させなければと思いまし
た。

生徒さん13人も「夢の輪」に参加してもらいましたが、それぞれが
できることを手分けし、みなよく手伝ってくれました。舞台の設置
から後片づけまで完璧。
また私の楽屋にもベテラン人がヘルプに入ってくれ、一瞬偉い先生
になったよう気分に?(苦笑)それにはまだ100年早いっす。

いつもある生徒さんのご主人様が、一手に快く舞台をお手伝い下さ
り感謝(現在お仕事でクリーブランドにいらっしゃるのですが、
NYまでわざわざ来て下さるのです)。時代をさかのぼれば、芸大受
験も考えていたような音楽愛好家でもあるので、音響や舞台にも精
通していて心強いスタッフです。本当にすべてがスムーズに行きま
した。




心配でたまらなかった客足も、椅子が足りなくなりどんどん足して
いたそうです。私一人だけ最後の最後まで、雪さえ降らなかったら
あと30人は来たのになって言っていたら、みんながそんなに来たら、
立つ場所もなく絶対に入れなかったから雪でよかったって…微妙?

本当〜〜に精神的&肉体的にも大変だったけど、やって良かったと
思えるコンサートができてよかった。でももう暫くはいいや。


恐るべきノロイウルス!!

今年も年末年始、家族で日本に一時帰国していたのですが、帰国の
前日ぬあ〜んと私がノロイウルスにかかったんです。朝からひどい
吐き気と胃痛、胃がねじれているのかと思った。もう全く起きあが
れず。明日朝5時には家をて、アメリカに戻るないといけないのに。
あまりの吐き気に家族も驚き取りあえず医者へ連れて行ってくれる。
先生は「間違いなくノロですね」って。点滴で胃痛が少し楽になり
ますよと言われたので、とにかくやってもらう。しかしノロって人
にうつる?息子に移ったらと家族も震えあがる。結局夜まで全く起
きられず、いつも最終日のお大仕事となっている山積みの荷造りは
妹と両親がやってくれた。朝になっても死にそう。
水の一滴も飲めない。口の中が砂漠。主人が月曜日から仕事なので、
帰国を延ばす訳にいかない。っていうか、子供を一人で連れてなん
か帰れない。

飛行機の中も子供を主人に預け私はぐだる。気の毒に旦那は、行き
と同じ様に飛行機の中をいったり来たり。ご苦労様!!

JFKに着き自宅までのtaxiの中で、さっきまで元気だった息子がい
きなり吐いた。
車酔いだろうと思っていたら、家についても吐く、吐く、吐く。完
全にノロがうつったと夫婦で悟った。が、そのうちよくなるだろう
と思って、脱水しないようにせっせとミルクや、リンゴジュースを
飲ませていたら更に噴水のように吐く。
12時になってもその勢いが収まらないので、仕方なくタクシーで救
急へ。どの程度ノロイウルスはアメリカで認識されているのかどう
かわからないけど、とにかくまずは点滴をするという。腕から針が
抜けないようにあて木をしているときに、医者と看護婦が喧嘩を始
める。先生はアフリカ系、看護士さんはたぶんフィリピン系かな。
看護婦さん、先生の包帯の巻き方が気にいらないらしくガンガン文
句いっていて、先生まけずに凄い剣幕で反応している。やめてくれ
よ〜!!救急病棟で喧嘩ですか?
結局点滴が終わったのが明け方5時半。だんなさんはそのまま仕事
へ。本当にお疲れ様。
後から分かったけど、ミルクやリンゴジュースは更に吐き気を誘う
ので、絶対に飲ませないようにということ。新米パパママ、なにも
知らない。


メトロポリタン美術館



江戸時代に作られたというお琴が日本で見つかり、メトロポリタン
がこの度購入。近々展示されるそうですが、その前にメンバーの方
へのお披露目があり、そのイベントで演奏しました。

まず楽器をみなさんにお見せするのですが、なにせ古い楽器で明る
いライトは保存に良くないと、懐中電灯を照らして見せていました。
今までに戦前の楽器を数面見たり、安く引き取ったりしたことはあ
りましたが、流石にこのレベルの豪華な琴を見るのは初めてでした。
楽器全体に螺鈿細工などが施してあり、時代を感じる立派なもの。
だれかが質問でいくらくらいの値が付くのかと尋ねていましたが、
もちろん誰にもわからないとの事。まあそりゃそうでしょうね。で
も美術館はいくらで買ったのかな??私は興味深々です。


ワシントンDC 桜祭り



全米一番大きな規模で桜祭りが行われるのは、ワシントンDC。
先日オープニングセレモニーがあって、渡米当初からよく知ってい
るハワイ在住のケニー遠藤さんの太鼓のゲストとして呼んでいただ
いた。お天気も良かったこともあり、約2500〜3000人の人が開催式
に参加。しかし、太鼓はどこでも人気があるんですね。荷物が異様
に多いし、とにかく重いから、年々運ぶのが大変になってきている
事を実感している今日この頃です。
式典に花を添えるために、ミス・ユニバースが来ていました。
背が高い!!当たり前です。レセプションでお聞きしたのですが、
7月で任期が終わるので、どんどん忙しくなっていらっしゃるとの
こと。今回はアメリカ2泊3日の旅だそうです。どんな仕事も大変
ですね。



桜の開花と共に忙しくなるこの時期。わたしに暫く週末はない。
正直言ってちょっとつらい。4月は何度も泊まりの演奏があり家を
空ける。息子が「ママ〜〜」と、主人に駆け寄る。これで本当にい
いのかと悩む日々。
季節労働者、過酷な春がやってきた。


その43 2008年7月22日

時間を楽しむ
春期の忙しい時期が終わって、このところ時間がゆったり流れるの
を肌で感じながら生活しています。
忙しかった時期と同じ、1日が24時間だとはと〜てい思えないです
ね。

年間通して家の雑事、子供の世話、40人以上の御稽古、色々なイベ
ントでの演奏に追われ時間に流されてしまって、なかなか自分のやっ
ていることを振り返れない事が悩みと言えば悩み。
とても贅沢な悩みではありますが…。

とにかく、このところ琴に関することで特別に書くこともないくら
いのんびり。こんなのもいいな〜なんて毎日を過ごしています。


先日バイオリン奏者の五嶋みどりさんが運営している、Midori &
Friendsという組織の主催で、マンハッタンの中心部にあるソニービ
ルの1階で子供向けの音楽イベントが行われました。来ていたのは、
生後間もない赤ちゃんから、7才くらいまでの子供達。みどりさん
のお母様やニューヨーク大使奥様もいらしており、大変豪華で盛況
でした。お琴でも2人の子供が参加しました。
こちらに住む多くの日本人の子供達は、週末に日本語の補習校に通っ
ていて、うちの子達も学校が終わって車を飛ばし、真っ赤な新しい
ランドセルを背負ったまま会場へやってきました。到着時間が演奏
の15分前で…大人は冷や汗ものでしたが、お子達は平然としていて
…。ここ数年、会場に展示されているスパイダーマンがお子達に大
受け。マジ大きいんです。見とれてないで、頼むから先にまず琴弾
いてくれ〜〜!!
浴衣を急いで着たのと、慣れないせいもあって裾が開いてしまった
らしく、そちらに気が行ってしまって多少パニクッてはいましたが、
それがかえって可愛かったというコメントもあり。
世界共通、子供が集中できる時間はとっても短い。ましてや琴のよ
うな静かなものは5分が限界。それが琴の後の太鼓になると、やた
ら元気が出ている。ああ〜〜なんだかな〜〜…?!



ニューヨークタイムズのウェブ用の撮影があり、その中である男性
俳優が琴を弾ける人を捜していると連絡が来て、興味深々で翌日い
そいそと撮影スタジオへ。
私が頼まれた俳優の他に、いまテレビや映画でも大人気のsex and
the cityという番組に出ているミランダ?役名か本名?なのか、その
人も同じ場所で撮影すると企画会社の人からのmailに書いてあった
ので、早速インターネットで調べたけど、なんのこっちゃらさっぱ
り。とにかく売れている番組らしい。

その超有名女優さんにカメラがついてまわっている。この私、とに
かく彼女の名も顔も知らない。番組の司会の人か?と思っていた。
その人が有名女優さんだったらしい。
後から聞いたのですが、彼女にも2人お子さんがいて、現場では連
れてきたうちの息子を友達が見てくれていたのですが、知らない場
所で私と離されたから、隣町まで聞こえるような声で大泣きしてい
るのをとても心配してくれていた。私と同じ歳。大女優さんでもやっ
ぱりお母さんですね。

肝心の一緒に撮影する俳優さんは知る人ぞ知る人らしい。
映画にも出ているが、いまは制作側にいるとか、だから私は知るわ
けがない。
現地に着いて、彼から「紅葉」の伴奏をして欲しいと言われたが、
楽譜なしでいきなりは…さりげなく「さくら」はいかがかですかと
ふってみる。すんなりOK。
間違えて弾いてもよくて、2人で一緒に練習しながら歌う場面が良
いらしい。全く訳がわからない設定だった。

久しぶりに撮影現場に行って、いっちょまえに小さいマイクつけて
もらって、お化粧もしてもらって、あ〜〜ドキドキ!!
が、一体その場面はその後どうなったのか、本当にウェブで見られ
るのかしら?

次の日、数人の生徒に女優のミランダっていう人に会ったんだけど
知ているかと聞いたらみな大興奮。
私一人冷めていた。ある意味興味がないとは凄いことである。

9月まではあまり着物を着る機会もないし、急に暑くなったことも
あって久しぶりに髪を短く切ったのですが、それでもたまにある演
奏。着物の時には髪をまとめないといけないのでアップにしようと
努力はするのですが(結ぶほど毛はないけど)、ぬなんと!短すぎ
て付け毛を引っかけるところがなく、時間が経つにつれてどんどん
つけ毛が下に落ちてきてちょうキモい。見ている人達も気になるら
しい。


この数年、日本人が中心に集まるイベントで演奏を頼まれることは
非常に少ないのですが、たまに呼んでいただけば面白いことが。
それは何かと言えば大量の「ざーます」おばさまによく遭遇するこ
と。
鼻にかかった声で、さようでございますかとかなんとか…。
世の中に、本当にそういう言葉を使っている人がいるんだ〜〜っと、
庶民のあたしは興味深々。
下向いて琴弾きながら、おばさま方の話しに聞き入ってしまいます
(っていうか、勝手に聞こえてくるんですよぉ)。

数年前めっちゃおもしろいことがあった。
会場はマンハッタンにあり、誰もが知っている名高い大学の卒業生
などが集まる所。
そこで、ある日系企業の新年会で演奏を頼まれたのですが、生憎朝
から大雪。

長靴履いていくべと思うくらい道はぐっちゃぐっちゃ。
そんな日でもこの建物に出入りしている男性陣の殆どは蝶ネクタイ
(やっぱり…大学だなあ?)。同伴の女性陣もそれに相応しい雰囲
気であることは当然。

私は長靴で現場に行っても、どうせ着物に着替えるから問題ないん
だけど、partyに出席する殿方、特に奥様達には悪天候は地獄かも。

琴をsetしてトイレで着物に着替えていたら、partyに出席の女性陣
が次々とトイレで着替えを始めた。こちらのトイレは防犯の理由か
らドアが下までないので、足下がよく見えるんです。

partyが始まって、トイレで?見覚えのある靴を履いた女性が私の隣
でお話しをされていたのですが、大きな声で話しているから話の内
容が聞こえちゃって。「今日はなんとも足下が悪い日になりました
よね、あたくし達は、宅の主人の会社の車でここまで乗り付けまし
たので、幸い洋服が濡れることもなく参れましたものですから…」

琴爪をはめた右手が止まりそうになりました。
奥様?さっきトイレで長靴からヒールに履き替えていましたよね??
上流の方々って、大雪の日でも長靴を履くことがそんなに恥ずかし
いことなんだろうか?

そうこうしていたら他の奥様が「まあ外国でお琴、なんて素晴らし
い、良い趣味をお持ちでいらっしゃいますね。日本の文化を広める
ために、どうぞこれからも頑張って下さいね」とかなんとか。

流石に言えなかったが「はい、言われなくてもそのつもりでおりま
す。そして一点訂正させて下さい。琴は趣味ではありませんのよお
ほほほほぉ〜〜」と自然に言える様になる自分が待ち遠しい。
本当に人からお琴を趣味と言われるのはつらい。

私は汚い格好で行ってもな〜〜んにも問題ないとはいえ、実はそう
でもないか…。生の演奏を入れる余裕があるイベントとなれば、だ
いたいがそこそこ格式高い場所で行われる。

演奏の当日、または打ち合わせに行ったとき、マジで冗談にならな
い位会場とは見合わない洋服で玄関を入ろうとすれば、門番にMay I
help you?と声を掛けられる。
他のお客さんにも勿論同じ言葉で声を掛けるが、なんか違う感じ。
完全に疑われている。
私の場合、上から下まで間違いなく服のチェックされている。
どうみても用事があるようには見えないんだろうけど、このあたし
はちゃんと用事があるんです。ここで!!

疑われている事に対して無性に腹が立っているんですが、気を持ち
直して、ええあなたの質問にお答えしましょう。
「ええ私はねえ、6時にこちらの…さんと…のイベントの打ち合わ
せでお約束があるんですよね」と、言ってのけてやったが、運悪く
その人、よくある名前。どうやら従業員に同じ名前が何人もいるら
しい。名字は何だと聞かれて、ちょっとしどろもどろ。

そんな時、タイミング良く彼が上から「は〜い、Masayoさん」と言っ
てくれて。ざま〜〜って感じ。大きな声でわざと「Thank you for your
help」と言ってやったまではよかったが、廻りをよく見てみれば
やっぱり…たしかに浮いている。
強気の私もちょっと怖じ気づいて、少しだけだが恥ずかしさがこみ
上げる。
本当は激しく浮いているんだろうけど、それでもちょっとだけに違
いないだろうと思う厚かましさが私にはある。女も40才を超すとこ
うなる。

一応彼に「こんな格好で来てしまってごめんなさい」と言ったら、
「な〜〜に、全くかまわないさ」と言ってくれた。
なんて優しい人だろうか。でもそんな彼もやっぱり蝶ネクタイ。

毎回ドアで止められて、やつらを足蹴りしそうになる位むかつくの
に、何年経ってもそこんところを改善しない私である。
まあ、気もないと言った方が正しいか。人間身なりじゃないでしょ
う。でもTPOと言う言葉は世の中にはあるなあ。ちょっと考え直す
べきか?


この夏は本当にゆっくり過ごす予定ですが、9月中旬からまた忙し
くなります。11月にはサンディエゴのオーケストラと一緒に忠夫先
生の"鳥のように"を演奏させて頂くことになっていますし、色々
なイベントでの演奏も決まっています。今の内に鋭気を養っておか
ねば。


先日やっと2才(やっと…だぁ)になった息子が、寝て起きたら急
に色々な言葉が話せるようになっていて、私の言動にも注意が必要
になってきました。なんでも繰り返して言うので、大人がどっきり
させられています。日本語とスパニッシュ(シッターさんが話すの
で)は、ほとんど話の内容は理解できるようになっているので、こ
れを機会に彼の日本語の練習に精を出したいと思っています。



だってすでにまず始めに英語が先に出てきてしまうから。NO!
NO!とか Go、カモン、マミー、ダディーですって!
バリバリ日本人の顔なのに。


その44へ続く



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